【コラム】ペットロスについて
ペットロスは、ペットとの別れを考えたときに、すでに始まっています。たとえば、15年ともに暮らしたペットが不治の病にかかった時、飼い主さんは、悲しみを覚えます。この悲しみは、ペットがまだ生きているのに、飼い主さんが「死」や「別れ」を思い浮かべたためにおきたもので、これもペットロスの一種です。このように、ペットロスは、ペットが生きていても起こるのです。
ペットを愛するあまり、ペットだけが、その飼い主さんの心の支えになっているというケースがあります。 このような方は、「ペットとの別れ」というテーマと正面から向かい合うことができないまま、ペットロス(ペットの肉体との別れ)を迎えます。このような場合、とても辛く深刻な悲しみや苦しみを長く経験しつづける可能性があります。
ペットロスを早期からイメージするという方法があります。今、ペットを飼いたいと思っている方が、今からペットロスを考え始めると、多くのことが見えてきます。そして、それは、自分が「ペットを飼えるか」ということにもつながります。それは、「よく考えてみれば、自分は一人暮らしなのに、何日間も宿泊をともなう出張が多い」とか、「夫婦共働きでペットに餌をあげる人がいない」などです。これらの問題を考えずにペットを衝動的に飼ってしまったら、そのペットは、すぐに、その飼い主さんとは暮らせなくなります。このようなペットロスの場合、飼い主さんやその家族の心に大きな傷だけを残します。だからこそ、飼う前にペットロスを家族みんなで考えるのは、とても大事なことです。
でも、必ず、いつか「その日」は訪れます。そして、悲しみのないペットロスは、ありません。ペットロスが悲しいのは、ペットと別れた瞬間、ペットが「愛を求めていた飼い主さんに、愛を教えるためにやってきた住み込みの家庭教師」であったことに気づくからです。 師の恩は、山よりも高く、海よりも深いと言います。ペットは別れの瞬間まで、飼い主さんに愛だけを教え続けて、去ります。終生、何の見返りも求めず、 ただ愛の本当の意味だけを教え続けてくれたペット。その気高さ、ひたむきさに心打たれるから、飼い主さんは、悲しいのです。その悲しみは、ペットを愛した人にだけ許される特別な感情です。だから、ペットと別れたら、思い切り泣いてください。あなたの悲しみ、あなたの涙は、これ以上ないほど純粋で、正しいものです。
寄稿:悠崎 仁